間伐はなぜ必要か?



間伐の必要性

 

 

「間伐はなぜ必要か?」、この表題にだいたい近づいたと思います。間伐が行われないと、とんでもないことになるのです。間伐が行われていない人工林では、木の枝葉が茂っている樹冠同士が接してくるので、地面に光が届かなくなります。そうなると昼間でも地面に日が当たらず、下生えも生えなくなります。

 

 

下生えがないと、地表の栄養を含んだ土が雨で流されてしまい、杉の成長も止まってしまうのです。ひょろひょろ高く伸びますが、幹が太くない、いわゆる線香林になります。まさに林業のピンチです。

 

 

線香林では、杉は根を張る力も失って、ちょっとした風雪害でも折れてしまいます。大雨が降ると根こそぎ流れてしまいます。山も水を蓄える力を失って、大水や山崩れといった災害を引き起こすことにもつながるのです。山の麓の山村だけの災害に留まりません。上流の山が水を蓄えられないと、下流の町が大水に襲われる恐れもあるのです。

 

 

自然物が果たしている役割を人工的なダムや浄水場で代用するにしても、洪水の緩和だけでも年間6.5兆円、水資源貯留が8.7兆円、表層崩壊防止が8.4兆円、水質浄化で14.6兆円という巨額の評価額になります。山林が行ってくれている機能を人力で代替するのは非常に困難なのです。

 

 

表面浸食防止の28.3兆円を加えると66.5兆円にも達するわけで、単純計算ですが、日本の人工林の内で10%の間伐が行われないだけで、年間6.6兆円の損失ということになるのです。現在の林業が抱えている問題は、林業関係者だけの問題ではありません。